東京医科大入試での性差別のニュースもあってか、「男女で学歴格差がある」というような見出しの記事が出ていました。

記事の要点をざっとまとめるとこんな感じ!
- 女子の大学進学率の全国平均は初めて50%を突破
- とはいえ男女格差は6ポイント
- 女子の進学率が高いOECD諸国に比べると依然低い。
- 女子の進学率の方が高いのは東京と徳島の2つだけ
- 男女格差が最大なのは山梨(15.7%)
大学進学率って地域差(実家から通える大学がどれくらいあるのかという教育資源格差)も大きいよなぁ。学費+下宿生活費を考えると一家で出せる進学費用に限りあるし「誰に」割り振るかで性差を持ち出されるのもありそうhttps://t.co/lPeuP0BFGb
— みてみて@Progate中 (@look_mam_look) 2018年10月10日
ということで、「子育て世代なら知っておきたい大学進学のリアル」について多角的に検証してみました。
結論から言うと、以下のことが見えてきました。
- 学歴格差は地域格差
- 地域格差は教育費負担の格差
- 東京に大学ありすぎ
大学進学に必要なものと、大学進学のリアル事情
まず、大学進学について必要なものを整理してみます。もちろん子ども本人の向学心と意欲があることが大前提になりますが、本人の努力だけではどうにもならない要素もあるよね。
- 大学
- 学びたい分野・興味のある学部
- 学力
- お金
それぞれ、条件によって進学の難易度って変わってきます。
1.大学がないことには進学できない問題
当たり前だけど大学がないことには大学へ行けません。そして、どこにどれくらいの大学があるかは地域差が激しいです。
表を見てみると東京にあるのは176校。全国1117校の大学・短大のうち15%は東京にあることに!それに比べて島根県は県全体で3校しかありません。

九州・沖縄の大学を全部足しても東京の大学数よりも少ない・・・
都道府県の大きさにも差があるので、面積当たりの大学数も比較してみました。
こうすると人口密度ならぬ「大学密度」がわかります。
島根県は2,236㎢につき大学は1校、比べて東京は12㎢につき1校。その差は186倍という結果になりました。
12㎢ってどれくらいかというと、東京ディズニーリゾート6つ分。ちょっと行くと大学に気軽に通える。地方住みからすると羨ましくて仕方ないですね・・・
日本の大学生の3割は東京周辺に住んでいるという調査もあるくらい、教育の東京一極集中は進んでるのが現実。
京阪神エリアも鉄道網が発達してるのでかなり進学先が豊富といえますね!
2.通うなら興味のあることを学びたい
義務教育ではないし、大学へ通うのには高い学費も必要。
貴重な時間とお金を使って通うなら興味のある分野を学びたいけど、通える範囲に希望の学部がないといけません。
が、県内の大学が(短大も含めて)10校もない状態では受験生に進学の選択肢があるとは言えないかな・・・
3.学力とマッチする進学先も限られてしまう
行きたい学部が近くの大学にあったとしても、偏差値が高すぎる or 低い、なんて状態だと納得のいく進学なんてできない。
進学校の高校に通っていれば志望大学のランクも上がり、地元の大学よりも都市部の有名大学が候補になってきます。
また、進学校じゃなくても学びたい分野と合格できる学力とマッチする大学を選ぶためには地元を出る必要がありますよね。
そこで出てくるのが、お金の問題です。
4.大学の学費よりも高い、「下宿費用」の壁
ベネッセの調査によると「国立大+下宿」よりも「私大+自宅から通学」のほうが4年間で150万円も安い。
下宿生の住居生活費は年間約100万ってことだけど、敷金・礼金・家具家電を買いそろえる費用は入ってないっぽい。https://t.co/grV07APhhI
— みてみて@Progate中 (@look_mam_look) 2018年10月10日
みなさん、子どもの学費への備えっていくらぐらいを目標にしてますか?
私立文系に4年間通うのに必要な学費は約400万円。ですが、もし自宅を出て下宿するとなると生活費もかかります。
〇四年間でかかる学費+生活費
国立大 | 私大文系 | 私大理系 | |
自宅生 | 416万円 | 575万円 | 714万円 |
下宿生 | 701万円 | 860万円 | 999万円 |
下宿しながら通う国立大より、自宅から通える私立 の方がトータルの進学費用は130万円も安い。(ツイートと金額が変わってるのは設備費を入れたから。)
家から離れて進学するとなると実際には
学校見学に行く
- 受験のための交通・宿泊費
- 下宿先の内覧のための交通費
- 家具家電を買いそろえる費用
などなど、他にももっとお金がかかりますよね?
つまり、自宅から通える学校を豊富に選べる都市部は大学進学へのハードルが低く、大学進学=地元を離れて下宿が必至の地方は教育費負担が重い。ということになります。

「子ども一人を文系大学に通わせる」のに必要な学費は「自宅外から私大」の場合、「自宅から国立大」の2倍かかるのか・・・
学歴格差は男女差よりも地域差が深刻
東京では72%が大学へ進学するのに進学率が30%台にとどまっているのが10県もありました。
表で見てみると進学率が低い地域は日本地図の端っこ。最低賃金が765円以下(全国最低値+5円)の地域と被っているところが多く、相関性が強いといえます。

県外の大学への進学費用がかさむのに最低賃金が低いという経済的理由が進学率に影響している・・・
北海道や山梨など男女の進学率格差の理由も気になるところですが、一方で男女格差がほぼない or 女子の進学比率が高い地域(徳島・東京・岡山・兵庫・岩手)があることも事実。
この辺りの理由も合わせて気になるところです!
全国平均以上の男女大学進学率&男女の性差が全国平均以下なのは
・兵庫県
・広島県のみ。
兵庫県と広島県出身の人は男女平等に進学の機会に恵まれているということかぁ。兵庫は女子大多い、広島は地場経済が強くて中堅大のブランド力はんぱない、みたいな印象はあるなぁ。 https://t.co/wg8fJiXS2y
— みてみて@Progate中 (@look_mam_look) 2018年10月10日

地方では高卒でも生活していける(学歴にこだわりがない)という見方もできなくはないけどもね・・・
多額の私学助成金が投入されている一方で定員割れも

四年制大学の36%・短大に至っては70%が定員割れしているという驚きの結果。
とはいえ地方にとっては「自宅から通えるところに大学を」という切実な気持ちはこれまで見てきた通りなので、大学を減らせというのも酷な話なのが現実なんですよね。
大学の東京一極集中を解消するためにいろいろと制度が変わってきていますがなかなか解決は難しそう・・・
東京への一極集中対策で定員超過に対する規定が厳しくはなっていますが、都心部の競争率が上がる→受験回避のために内部進学ができる中高一貫校の人気急増→有名中高一貫校に入れるような勉強ができる環境に教育投資。なので結局格差は縮まりそうにないですね…https://t.co/ulj2Re2RHk
— みてみて@Progate中 (@look_mam_look) 2018年10月10日
地方大学の希望? 私大の公立化が地域創生につながるか!?

定員割れしていた地方の私大が、公立化したとたんに志願者倍増のケースもあるとか。やはり「自宅から通えて学費も安いなら進学できる」という人は多いですよね。
公立化によって税金が投入されていることへの賛否もあるみたいだけど、そもそも日本は先進国の中でもズバ抜けて教育投資をしていない国なので、個人的には好ましい税金の使い方だと思うんですがねぇ・・・
まとめ:大学進学率と地域格差は関係性が強い
子育て世代として将来の教育費の悩みは尽きませんが、「どこに住んでいるか」の地域差も大きな課題だということがわかりました。
教育費の問題というと奨学金ばかりに目が行きがちだけど問題はもっと複雑で、教育機会の平等化まではまだまだ課題が山積してるように感じました。
今回の検証のポイントを改めて振り返りつつ、皆さんも考えるきっかけにしてみてください。
- 学歴格差は地域格差
- 地域格差は教育費負担の格差
- 国立大+下宿よりも私大+自宅から通学の方が130万円安い
- 東京に大学ありすぎ
- 地方の進学率アップのためには地方に大学が必用
参考文献
- 大学進学率 データえっせい
- 最低賃金 地域別最低賃金の全国一覧―厚生労働省
- 大学数 大学 – 都道府県別大学数
- 短大数 短大-都道府県別短大数
- 人口統計 探してみよう 統計データ
- 都道府県面積 都道府県の面積一覧―wikipedia
いつもブログを拝読している舞田先生からリプをいただいてしまった!幸せだ!
分かりやすい!
— 舞田敏彦 (@tmaita77) 2018年10月10日
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